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2010年7月21日 (水)

硝子売り

パリの僕のアパートはポワソニエール通りと
パラディ通りに面して建っていて、
9区と10区にまたがっている。
どちらも古い通りでオスマンのパリ改造時にも
ほとんど触られず壊されもせず、その代わり広くもならず
昔のままの狭い通りだが、バスが通るだけの広さはある。
ポワソニエール通りとパラディ通りの歴史については
このブログで書いた事があるので覚えてられる方も
おられるだろう。

通り沿いの部屋の窓を開け放して本を読んでいた。
ガルシア・マルケスの最新作,日本語訳では
どのように訳されているのか知らないが、
仏訳は<de l'amour et autres demons>
直訳すれば<愛とその他の悪魔>とでも訳すのだろうか、
難しい表現で、フランス人かフランス語を母国語
の一つとして話して、読める人にしか(きっと、、、)
読み取れない<不定冠詞がついている>

大好きなマルケスの世界が存分に広がっているこの話は
僕の心を捉えてぐいぐい引き込んで行った。
200年前の幻想の世界があたかも今そこに自分も
生きているように宮殿が,街が,人々がいる。

悪魔故の愛、マルケスならではのテーマである。

突然、開いた窓越しに,通りから懐かしい声が聞こえて来た。
<ヴィットリエー!オ、ヴィットリエー>
硝子売りである。

背中に梯子状の大きな長い木の枠を背負い、そこに
色んな大きさの窓用ガラスが置かれて落ちない様に
縛り付けてある。
枠の下には道具箱がありそこにはダイヤモンドの
ガラス切りや寸法指しなど道具が入っている。

背中に背負って<vitrier! au vitrier!>と甲高い声で叫んで
通りを通って行く。
39983


僕がパリに住み始めた1970年代には良く見かけたが、
今はもうほとんど見かける事はない姿で、
聞く事はない声なので、びっくりして通りを窓越しに
除いて見たら、あの懐かしい硝子売りが
風の様に通り過ぎて行き、その後に甲高い<ヴィットリエー、
オ、ヴィットリエー>という声だけがふわふわと通りを
彷徨っていた。

ウジェーヌ・アジェが世紀末に撮ったパリの
街の写真の中に様々な物売り姿がいくつもある。
そのなかにきっと一枚くらいこの硝子売りの
写真もありそうに思えるが僕の持っている
アジェの写真集には見当たらない。

皆さんに、ぜひお見せしたいと思って探したら
一枚見つかったので載せておきます。

ルネ・クレールの1930年代の映画<巴里祭/
原題はle 14 juillet 7月14日>によく似合う
硝子売りの姿である。

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