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2009年7月23日 (木)

新しいアルバムの歌2 わたしが一番きれいだったとき

秋以降に発売予定の僕の新しいアルバムの中の
2曲目は<わたしが一番きれいだった時>
これは詩人の茨木のり子が1958年に書いた詩で
<見えない配達人>という詩集に入っている。
この素晴らしい詩に
多くの女流詩人の詩に曲を付けて
ご自身も歌ってられる
吉岡しげ美が曲を付けた。

僕はこの詩をこの曲でおよそ25年前に
初めて聞いている。
知り合いの歌手がコンサートで歌うのを聞いた。
フランス語の歌漬けになっていた当時の僕の
耳にこの歌はとても新鮮にそしてある種の衝撃と共に
飛び込んで来た事を今でも覚えている。
それから10年程たって友人から頂いた
茨木のり子詩集の中にこの詩を見つけて
曲が付いていた事を思い出し
歌ってみたいと思った。

その頃日本語で歌う事のなかった僕には
何度やってみてもすべての言葉は床に
倒れているか、寝そべっているがごとく
一つの言葉も身体を起こして
歩いてはくれず、勿論何の表情も
なく、魂を抜かれた夢遊病者のごとく
ふらふらと空をさまようだけで
背景に青空一つ描く事は出来なかった。

結局投げ出してしまいそれからまた数年間
この歌の譜面はパリの引き出しの
奥に入れたままで忘れていた。

そして2006年茨木のり子さんが亡くなった
年に日本で僕は初めてのCDをリリースして
東京でその発売記念コンサートが決定したとき
突然、この詩を歌いたいと思った。
練習してみると言葉たちはみんな
背筋を伸ばして立ち、動き、そこに
青空を、海を、名もない島を描いていた!

自分の中で何が変わり、どんな変化が起きていたのか
いまだにわからないが、とにかく僕は
日本語という楽器をならす事が出来たのである。

この素晴らしい詩を書いた茨木のり子さんに
感謝し、そしてこの詩に曲を付けた吉岡しげ美
さんに感謝して、さらに日本語に魂をそそぐ
すべを教えてくれたフランス語に感謝して
僕はこの詩を歌っている。

この詩の時代を生きた母を想い、
いまだこの茨木のり子の振り上げた拳
と同じ拳を握って生きてられる、
全世界の女性や若者を想いながら
歌っている。

この詩をご存じない方の為にここに
わたしが一番きれいだったとき、を
載せたいが、著作権の問題が生じる
と困るので茨木のり子の詩集を読んで頂くか
他に沢山ある色んな方のサイトで見て頂く事に
して、ここでは1998年新潮社の<二十歳の頃>
の中で茨木のり子がこの詩にまつわる
話をしているのでそれをご紹介したい。

「今、お友達ともよく話すんですけど、
若い頃ってかろやかな楽しみが多かったですね。
ええ、かろやかな。年を取ると重ったるくなっちゃうの、
すべてがね。

今はものがあふれてるから、
そんなことはあまりお感じにならないかも知れないけど、
私たちはもう、靴一足買ってもうれしかったわけよ。
それからレインコート買った時のよろこびも忘れられません。
そういうささやかな楽しみっていうのはありました。
でも、おしゃれをしたいとか、そういうことはできなかったの。

ただ、ああ、今二十歳なんだって思ったときがありました。
鏡見たら、目が真っ黒に光っててねえ。
うーん、そうか、今二十歳なんだ、
今が一番きれいなときかもしれないっていうふうに思ったのね。
残念なのは、自分の若さが誰からもかえりみられない
ということ、
特に男性たちから。かえりみられるっていうと
おかしいんだけどなあ。

それで、私がラブレターをもらったことがないって書いたら、
みんなにびっくりされるんですけどね。ひとっつもないの(笑)。
だからやっぱり時代的なものもあるし、
それからやっぱり魅力がなかったのかな? 
男たちはみんな戦争に負けたってことで、
ひどく自信を失ってたと思うのね。
だから、そういうさびしさっていうのもあったんだろうなって
いうのも、今になって思うんですけどね。

「わたしが一番きれいだったとき」は、
はじめはいい気な詩を書いたってみんなに言われたんですよ。
一番きれいだなんて自分のこと言ってるってね。
ところが、ほんとに自分でも無意識だったんですが、
私と同世代の人たちは、自分たちを代弁して、
自分たちの世代をうたってくれたっていうふうに
読んでくれる人が多くなって」

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コメント

ウオーキングしているときいつも通勤ラジオを聞いています
週に2度ほどしか歩いていません
だから偶然だったのですが、ワサブローさんがトークされている時間帯を聞きました。人の耳に優しい語り口、知人にも偉い先生なのですが、電話とかでアドバイスいただいたトーンと同じなのですごくいい感じに聞いておりました。早速CDを申し込みました。今後日本に定期的に長期帰られてCDもどんどん出されるとのことで、比較的縁の遠いシャンソンと申し訳ありませんが、親しみやすい音楽となるように折見て聞きたいものです
ありがとうございました

投稿: ke/////ki | 2009年7月24日 (金) 17時09分

ke/////ki |  さま、
はじめまして、CDも聞いて頂けるとのこと、
ありがとうございます。
機会がありましたら、是非ライブにもお越し下さい。
僕のライブの顔は全くまたCDとは違った世界を
作っているので楽しんで頂けるかもしれません。
日本は暑ですがどうぞお元気でお過ごし下さい。

投稿: ワサブロー | 2009年7月24日 (金) 18時01分

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