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2009年4月 9日 (木)

櫻とフランソワとパトリック

パリからやって来たフランソワとパトリックは
東京と京都のコンサート、それに新しい僕のアルバムの録音を
済ませてパリに帰って行った。
彼らがいた2週間は彼らが留守にしていたパリが
嫉妬心で怒りの寒気をこちらに送って来たのかも知れないと
思うくらいに寒い毎日で、予定では彼らの到着を歓迎する様に
咲いてくれると思っていた櫻もすぐには咲かず毎日寒い寒いと
言って過ごす事になってしまった。
それでも東京では浅草の観音さまにお参りして
合羽橋で買物をして、表参道ではキティランドに二人は
入ったまま出て来なくて僕は見失うと大変と1階から5階までを
何度も上がり下りしてくたびれ果てた!
秋葉原ではビッグカメラの品揃いに僕も含めて驚いて、
もっと驚いたのはコスプレキャッフェというものの初体験。
勿論僕も含めてフランスのニュースで聞いて知っていたが
実際どのようなものか知らずに特に興味も無かったのが
三人で歩いている時目の前に何とも形容のしがたい店の様な
物が目に入った。よく見るとコスプレイ喫茶と書いてある。
三人ともまず猥褻な場所ではないかと注意して看板や店の中も
覗き込んだが何となくその手合いの店ではないと判断して
それでも踏み込む価値があるのか悩んだが
(悩む程たいそうな事ではないのですが)
なにぶん世界の何処にも無いに決まっているものの前に
立っていることの誘惑に勝てずドアーを開けた。
まず驚いたのが店の中全体が驚く程キットなしつらえで
壁の後ろにつっかえ棒で支えていある映画のセットの
ようなもの。そこにフリルの付いた短いエプロン掛けに
可愛いワンピースを着た子どもの様な女の子が3人、
一人はカウンターの中、二人はホール(?)で
それぞれがお客さんの接待をしていた。
僕は小さい時からマンガは苦手で勿論成人してからも
その手の雑誌などにも親しんだ事が無いので
このコスチュームが何かのマンガの登場人物なのか
わからない。店内は中学くらいの若い男の子のグループや
サラーリンマン風の兄ちゃんなどがグループを除いて
すべて誰も一人づつ孤独を楽しむ様に座って本を読んでいた。
お客は皆若く、全員男で、おっさんは僕たちだけ
というのも何となく居心地が悪かった。
店内の安普請のキットなしつらえを除いては何も特に
僕の目には変わったものはなくただ女の子がサービスや
注文などそれぞれのテーブルに来てお客と話す時には
ひざまずく様子がなんとも不思議な感じがした。
フランス人二人はこの珍しい光景をどうしても本国の同胞に
見せたく写真を撮りたいと言い出したので尋ねてみたら
写真はポイントを集めた人のみ
女の子と並んで写真を撮る権利を得られるらしい。
僕はこの二人は遠くフランスからわざわざこのお店の評判を
聞いてやって来てもう明日フランスに帰るのでポイントを
貯めている間が無いので是非特例を認めて写真を撮らせて
欲しいと粘ったが(どこの世界にこの店の評判を聞いて
わざわざ飛行機に乗ってまでそのためにだけ来る人は
いるはずが無いので僕がでたらめを言っている事はキット
彼女にもわかったに違いない)特例は認められず普通よりも
多くのポイントを頂いただけで料金を支払って出たが
フランソワはしっかりその間に店内もエプロン姿の女の子も
カメラに収めてしまっていた。
僕は正直このような物の存在理由がいまいち理解出来ずにいる。
注文してからコーヒーが出てくるのに待たされる時間、
そのコーヒーの質、内装の趣味など何一つプロの仕事は無い。
ただ素人の女の子がままごと感覚でやっているにすぎない
この悪趣味で幼稚な空間に人は何を求めてやってくるのか、
結局僕たちフランス人にはわからずに初体験は終わってしまった。
そしてその翌日は渋谷でのコンサートそしてレコーディングが
始まった。
その合間をぬって今回の彼らの最大の初体験があった。
神戸の有馬温泉に兵衛向陽閣という長い歴史をもった温泉宿が
ある。太閤秀吉ゆかりの温泉として今にいたる600年の
歴史が刻まれている。
そこの女将は素晴らしい女性で50年もの間大きな旅館を
支えて来られた。いつも着物姿できりりとした立ち振る舞いの
美しい方で戦争、震災などの大変な難関をご主人の亡き後も
家族を守り、旅館を守り一人で生き抜いて来られた。
有馬の今も彼女の功績を除いては語れない。
この女将が僕の仕事を評価して下さりもう10年も前から
毎年年に一度向陽閣の一室で歌う機会を作って下さっている。
神戸近辺のお知り合いに声をかけてサロンコンサート
を催して下さっている。
自分の家に帰って来る様な気持ちでお風呂に入りに来て下さい、
と言って頂き、毎年僕はこの有馬のお湯に入れる
幸せを頂いている。
一年に一度僕は周りの美しい自然を
眺めながらゆっくりとお湯に身体を沈め、
日頃の慌ただしい生活からはなれてパリも忘れて
日本を満喫できるこの大変光栄な恩恵に預かっている。
今回女将から是非フランソワとパトリックを連れて
有馬の温泉にいらっしゃいという素晴らしいお誘いを頂き
厚かましくもフランソワとパトリックを連れて
有馬まで出かけた。
以前別のフランス人の友人とお風呂に入ったおり
彼らはこんな熱い湯にどうして入れるの!!やけどをする!!
と叫んで駄目だった事があるので事前に二人に尋ねてみたら
フランソワはきっと前世は日本人だったと
僕は確信しているくらい日本の物は食べ物も含めてすべて
OKなので始めからお風呂も大丈夫とわかっていたが
こよなくフランス人であるパトリックは
<40度のお湯に入るの!きっと駄目だと思うけど
とりあえず行ってみたい>という返事が返って来た。
駄目なら駄目で仕方が無いと思いながら出かけてみたが
思いに反して二人とも浴衣、羽織り姿も結構似合ってお風呂は
<毎日入っていたい、なんでこんな気持ちいい発想が
フランスにはないんや!>と叫ぶ程の気に入り様で、
お湯の後贅沢な食事をお部屋で頂き、
そのあとカラオケ初体験にでかけた。
僕はカラオケは大変苦手で、マイクを持つとどこでも
仕事モードになってしまい楽しむなんてとんでもなくなる。
フランスには数える程のカラオケバーの様な物があるが
日本の様に日常になってはいないのでフランス人二人は
ぜひ行きたいと三人で出かけた。
その夜はカラオケ部屋のお客は僕たちだけで
貸し切り状態の中での初体験となった。
結局張り切っていたにもかかわらずフランスの歌は
非常に少なくシャンソンとして選べる曲もほとんど日本語の
歌詞しか出て来ずフランソワはビートルズのミッシェル、
パトリックはオーシャンゼリーセ、僕は雪が降るを
それぞれが歌い、カラオケ特有のすごいリバーブに驚き、
一人ずつのパフォーマンスに
笑い転げてカラオケ初体験は終わった。
その日の有馬は気持ちのよい晴天で
櫻はまだ咲いていなかったが自然を満喫出来た。
本当に素晴らしい滞在で彼らにとって今回最大の
イベントになった。
櫻はなかなか咲いてくれず、やっと京都に帰った
3月も本当に終わりの頃から少しづつ咲き始めた。
櫻の花を通して僕たち日本人が持っている
儚さの美学をフランソワに感じて欲しいと思っていた願いは
叶い、京都高台寺のしだれ桜、銀閣寺、哲学の道
の桜並木、名も無い寺にひっそりと咲く桜の花に
フランソワはこの儚さの美を十分に感じとっていたようで
親友の距離がまた一つ近くなった様な気がして嬉しかった。

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