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2008年1月 3日 (木)

おおつごもりから元旦に

新年おめでとうございます。
新しい年が皆様に優しく,温かい年であります様に。
そして今年も昨年より数多く日本の皆様とお目にかかれる
機会があります様に。
12月23日の東京ヒルトン、クリスマスディナーショーも
無事終えられた。
300人もの方が来て下さった。
遠くから来て頂いた方も沢山おられた。
ありがとうございます。
23日当日は天気予報では雪か雨だった。
雨で中止にはならないけれど大雪が降ると電車が止まったり
新幹線も運休になったりしてこられない方が出た場合は
どうするのかしらと心配した。
雨にしても雪にしても鬱陶しい事には違いない。
特におしゃれをして来られる方には空からはいっさい何も
降ってほしくないに決まっている。
当日、朝目をさましてホテルの22階の部屋のカーテンを
開けた。
晴天である。
真正面に富士山が見えた。
くっきりと美しい姿が目の前にあった。
僕には霊山信仰は少しもないどころか山にはまったく
興味がないが富士山だけは美しい山だと思う。
フランスにいるので今までにモンブランやスイスの
アイガーなどいわゆる有名な山を目の前に見たり
中腹まで登ったりもした事があるが
大きな感動を覚えた事も無く、とりわけ美しいと
一度も思った事も無いのだが富士山だけは
不思議といつも美しいと思い冬の晴れた日に
新幹線から見える姿にさえ感動を覚えて
電車のデッキまで走って行って見えなくなるまで
見ている事が何度もある。
この日の朝も澄んだ青空を背景に富士山が
見えるとなんだかそれだけで今晩は問題なく
いきそうだ、という確信が全身に湧いた様な気がした。
大きな失策もなしに最後まで歌い終えられ、
アンコールで歌った愛の讃歌のあとまだ拍手が終わらず
大きな声で<いとつむぎ!>と何人かの方のかけ声を
受けてもう1曲<糸紡ぎ>を歌った。
2曲のアンコールは久々で、嬉しく、初めての東京での
クリスマスディナーショーを盛会の中、2007年最後の
コンサートの幕を締める事が出来た事に
深く感謝をしています。
翌日京都に戻るために乗った新幹線の中からも
夕陽に照らされた富士山が美しかった。
この前、年末に日本に帰ったのはいつだったのか
思い出せないくらいに久し振りの日本での年末年始である。
京都に戻って仕舞い天神(北野天満宮の毎月25日の縁日で
1月は初天神、12月は仕舞い天神と呼ばれている)に詣って、
おおつごもりは30年ぶりにおしめ縄と根引きの松の門松
それにちょろけんさんといって家の各所、水廻りや鬼門に飾る
簡単なおしめ縄(裏白とゆずりはと御幣をつける)を作って、
かざり、家のものがお煮しめ(おせち)を準備している間に
僕は大掃除をした。家には大正時代のガラス戸が多いので
何十枚のガラスを割らない様に磨いた事になるのか、
肩がいたかった。
祝い箸に家族それぞれの名前を筆で書き,菜箸を組重と書いて
翌日の用意が整った。
その夜は家の近くの禅寺に友人に誘われて除夜の鐘を
つきに行った。
ろうそくの明かりだけが広い寺の中を照らしている静かな
寺院の鐘楼の前で和尚と共に般若心経を唱和のあと
一人ずつ上がって鐘をついた。
荘厳な響きが寺の上空を舞い上がり、満天の星空を駆け抜けた。
お寺で年越しそばをいただき元旦を迎えた。
30年来パリでは12月31日は友達の家でパーティーをして
12時の時報と共に<ボンナネ!bonne annee!>と抱き合って
迎えた新年とは全く違っていたが僕には何故か鐘の音の方が
気持ちがなごやんだ。
夜中に北野天満宮まで初詣に出かけて翌日は家族で初めて京都で
新年を祝いお雑煮をいただいた。
特にパリで生まれ育った長男には初めての事である。
京都のお雑煮は白みそ仕立てで丸餅を焼かずに入れ、
薄切りの人参とおだい(だいこん)と男には頭芋を入れて
男は赤、女は黒の大きな蓋付きの祝い椀をやはりこれも男は赤、
女は黒の足付きの祝い膳(女性の方のが高くなっている)
にのせて出す。
もちろんお雑煮は細く切った昆布と梅干しの入った
お茶をいただいてからである。
お重に詰められた数々の煮物にはすべてわけがありいわれがある
と昔祖母が言っていたが、一部のものを除いて今はもう
思い出せない。
お重の中の冷たい煮物が口に入った瞬間、時はさかのぼり
母や祖母,おばちゃんや妹たちと祝った40年前のお正月が
目の前に浮かび上がった。
玄関には金屏風,赤い毛氈が敷かれて床の間には
松の飾りがあった。
十畳の間に10人近くの家族が美しい着物で揃って
お正月を祝った。
迷っていた魂がふるさとを見つけたような気分がした。
元旦に届いた10数枚の年賀状が嬉しかった。
僕は今、応仁の乱で西軍総大将の山名宗全が
堀川よりも西に陣を置いた事に名前の由来がある西陣に
住んでいる。
この地域には今も古い家が多く残り、むしこ窓も
格子窓もある家が多いのでさぞお正月にはおしめ縄も
門松も何処の家の門口にも見られるのだろうと
期待をして待った。
僕がお飾りをつけた30日にはまだ何処の家にも
正月飾りはなかった。
みんなぎりぎりにしはるんやなあ!と思って
元旦を迎えたが見事に廻り中何処の家にも
お飾りは無く、わずか1、2軒の家で
おしめ縄が見られただけだった。
僕には大きなショックで理解しがたい実情である。
クリスマスには派手なイリュミネーションが
何軒もの家に見られたのに。
僕は毎日落ち着きの無い日々を生きているので
時の流れる細かな音や変化にともすれば気がつかなく
なっている。
きっとそれだからこそ折りあるごとに月日の移ろい、
季節が変わるのを目で、身体で感じたくなってしまう
のだろう。
そのための指標の一つがが少年時代に家の中にあった
ようような伝統行事である。
その度にそれに必要な食器や調度品を閉まってある押し入れ
から出して埃を払い箱から出して飾ったり,使ったりすること
で自分の身体に四季が移ろい,流れている時がふっと
止まった様に感じる、その感触がとても好きで、
伝統や習慣に忠義立てをしているのではない。
とはいうものの長い年月をかけて先人たちが作って来た
かずかずの物には生きるための知恵と美学が詰まっている。
それを無視するには余りにも僕は多くの逝った人達に今なお
生かせてもらっている気持ちを日々忘れる事が出来ない、
ただそれだけのことなのだが。
30年ぶりのおおつごもりから元旦を京都で迎えて
今はいない僕の大好きな人々に長年の不義理を
少しは繕う事が出来たかもという気がしている。
今晩はかなり冷え込んでいる。
奥の間の雪見障子から庭を見ると粉雪が舞っている。
パリに帰る日が近づいて来た。
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嫁隠しにつけたちょろけんさん
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おしめ縄
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根引きの門松

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コメント

あけましておねでとうございます。初めてこのblogにやってきた、というより初めてワサブローさんのことを知りました。長年お世話になっている(迷惑をかけている?)Chinoisさんの新しいお店でオープニングコンサートをされる情報を目にしまして、「日本人シャンソニスト?」と気になり調べてみますと、「春告鳥」という文字が目に入ってきました。30年前私がまだ小学生の頃、親友と2人でさださんのファンになり、小学生には難しかったであろう歌詞を何十曲も丸暗記し、2人でその意味を一所懸命解読しようとした記憶が蘇ってきました。大学に入ってからさださんの曲から遠ざかってしまったのですが、最近ふと気づくと、鼻歌でさださんの曲を歌ってる自分がいます。そこへワサブローさんの存在を知り、春告鳥のことも思い出した、ということで、人生の縁とは面白いものだな、と思っております。フランス語はワイン名しか読めない私ですが、是非一度ワサブローさんのシャンソンを聴いてみたいと思っています。Chinoisのコンサートにも是非行きたかったのですが、私も欧州に住んでいるため行くことができません。パリの公演がありましたら、一度足を運んでみたいと思います。

投稿: UD | 2008年1月 6日 (日) 05時04分

UDさま、初めまして。ヨーロッパ在住の方にも
chinoisの案内状が届いていると知って驚いています。
きっと懇意になさっているので年賀状を兼ねてのご案内
だと思いますが。僕はこのchinoisのファンでいつ行ってもおいしくいただいてます。日本はまだ初春ムードですがヨーロッパはもう何も無かった様に日常が動いていると思います。寒いでしょう!どうぞお元気で。

投稿: ワサブロー | 2008年1月 6日 (日) 12時52分

ワサブローさん、いつまで日本ですか?

投稿: Kazu | 2008年1月12日 (土) 00時30分

1月末にパリへ帰ります。パリも寒いやろなあ!

投稿: ワサブロー | 2008年1月12日 (土) 00時32分

あけましておめでとうございます。
ワサブローさん、日本で久方ぶりにお正月を迎えられたのですね。幼少の頃のご家族と過ごした元旦、雪見障子窓から眼に映る景色等・・・いつも歌われているシャンソン、ワサブローの世界を彷彿とさせるものがありますね。2008年も良い一年でありますように・・・・

投稿: はちまる | 2008年1月12日 (土) 10時54分

chinoisさんってケーキやさんですか、それともレストラン??ワサブローさんがオープニングコンサートをするのはどこにあるお店なのですか??

投稿: satsuki | 2008年1月13日 (日) 15時21分

satsukiさま、chinois(シノワ)は渋谷にあるおフランス料理のお店です。
オープニングパーティは今日ありました。これはシノワのオーナーが銀座に新しく開店されたお店でフランスビストロで名前が僕の歌っているヌガからとられてle nougatル・ヌガと名付けられました。その御縁で今日のオープニングパーティで歌いました。このお店は銀座松坂屋の裏通りにあってとてもいいお店です。今日のことはあらためてブログにちかじが書こうと思っています。

投稿: ワサブロー | 2008年1月14日 (月) 00時08分

ワサブローさま
chinoisさんのこと教えていただいてありがとうございます。お店の名前がle Nougat,お洒落です。ワサブローさんの歌から名づけたなんて、いつか行ってみます。ブログに書かれるのを楽しみにしていますね。

投稿: satsuki | 2008年1月14日 (月) 11時44分

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