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2006年12月 4日 (月)

鳥の市、花の市

パリのシテ島に毎日曜日花の市と鳥の市が出る。
ノートルダム寺院の直ぐそばでパリ市警察庁の目の前にでる
この市には多くの花屋と主に鳥を扱っている店が何軒も
並んでいる。その中には小鳥だけでなくオオムや九官鳥
それにウサギやハムスター、チンチラや七面鳥や鴨、雁、
金魚も売っている店もある。
そこにある一軒の店へ僕は一緒に暮らしているプレリードックの
タローの餌を月に一度買いに行く。
12月に入ると日が一段と短くなった。
朝は8時にならないと夜が開けきらなくて
夜は5時にはもう暗い。
雨が上がるのを待って出かけた。
僕の住んでいるポワソニエール通りは
古い通りで名前は2度ばかり変わっているがその起源は
17世紀に遡る。
したがってこの通りにはその当時の建物も少なくなく
僕のアパートの建物も17世紀に建てられている。
19世紀末には当時の流行の先端をいくキャフェやレストランが
立ち並び、男は燕尾服、女性はコルセット入りのロングスカート
で道行く人々と御者付きの馬車が所狭しと行き交い、
そして駐車をしていたこの界隈の様子は
プルーストの<失われた時を求めて>に描かれている。
そのパリ一番のおしゃれな通りだったブルーバール・
ポワソニエール大通りと僕の通りは交わっている。
画家のコローのアトリエがありフォーレの曲に詩を書いている
詩人のシュリー・プリュドムの家もこの通りにあったと
鑑札の出ている建物の前をいつもの様に通り
大通りに出て驚いた。
通りの向かいにある1932年に出来たパリ一番の古くて、
大きい映画館REX,レックスの前に恐ろしく長い人の列が出来ていた。
パリでは封切りの映画館に長蛇の列が出来るのは珍しい事ではない。
封切り前から人気のある映画は皆前売りを買いそれでも1時間以上は
覚悟して並ばなくてはならない。
今日のレックスの前にも雨よけのテントが100メートル以上
作られてその中に300〜400人くらいの人が並んでいて
そのほとんどは小さい子供を連れた家族で子供たちの大きな声が
通りを隔てて遠くまで聞こえていた。
この映画館には7つのフィルムシアターがあり1番大きいのは
3階建てになっている半円形の美しい30年代そのままの
内装が残っていて2600人も収容出来る。
随分前タイタニックをこの大きな部屋で見た事を思い出した。
1932年12月、雪の舞う中で開館式を迎えたレックスには
パリの社交界が総出で3000人集まり、
この巨大な当時流行の粋を集めたアールデコの建物の
エンターメントセンターに盛装してつめかけた様子は
レックスのサイトで見ることが出来る。
http://clients.pixelligence.com/rex/main.html
映画好きな僕だがこの頃は日本でのコンサートやレコーディングやと
パリを留守にする事が多くてしばらく映画とはご無沙汰している為に
この列の意味がすぐには分らなかった。
通りを渡ってレックスの裏口の前で出会った親子が
持っていたパンフレットの文字が目に入った。
ARTHUR ET LES MINIMOYS。
アルチュールとミニモワイ(日本だときっとアーサーと
ミニモイズとなるんでしょうか?)、
リュックベッソンの映画でミアファローと
ともに人気歌手のミレーヌ・フアルメールも出ている。
なるほど今日は日曜日、何処の家も子供のいる家族は
親の休日を犠牲にして子供の為にこの映画を
見に来ているというこれまたフランスでは
至極日常茶飯事の出来事で列の意味がわかった。
長い列を後ろにパリ随一の服の問屋街
サンチエを通り抜けてレアールから
シャトレへ出てセーヌ川を渡った。徒歩で約30分。
右手に見えるエッフェル塔は天気が良ければ
チョコレート細工の様に見える時があるのに
今日は曇り空に貼ってあるレースの切り抜きのようで
長谷川潔のビュラン彫りの版画が思い出された。
鳥の市と一緒に出ている花市場にはクリスマスのもみの木が
もう一杯出ていた。
数年前珍しくクリスマスの時期に日本にいたので
毎年パリでしている様にサパンを買って
クリスマスツリーを作ろうと
思いあちこち足を棒にして花屋を回り
大きい生のもみの木を探した事がある。
もみの木は何処にも売ってなくてがっかりしたと
同時にあれだけクリスマスを騒いでいる日本では
サパン(もみの木)のクリスマスツリーを飾る家は
ほとんどないとも知った。
小さい頃、いつもクリスマスツリーが僕の実家の玄関に
飾ってあったのに。
その年の20年振りのお正月には
クリスマスツリーが無い分さぞ門松は奇麗だろうと
期待したがこれも見事に裏切られて門松が見られたのは
ほんのわずかの家だけだった。
プレリードックおじさんのジャンクロードは
今日もにこやかにお客さんと接していた。
みんな常連である。僕も7年だから立派な常連だと思っている。
花の市と鳥の市が出てくるジャック・プレヴェールの詩がある。
僕が一番最初に出会ったプレヴェールの詩で
この詩が僕をフランス語へと繋げて
フランス語で歌を歌う様になり、いまパリで生きている、
という僕のフランスとの運命の糸の様な詩である。

 きみのために 恋人よ 

 ぼくは行った  小鳥の市場に
  そして買った 小鳥たちを
     きみにのために
       恋人よ
 ぼくは行った  花の市場に
  そして買った 花々を
    きみのために
      恋人よ
 ぼくは行った 屑鉄の市場に
  そして買った 鎖を
     重い鎖を
    きみのために
      恋人よ
それから僕は行った 奴隷の市場に
    そして君を捜した
   だがみつからなかった
      恋人よ

           翻訳 高畑勲 
           ジャック・プレヴェール、ことばたち
           ぴあ出版

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コメント

ワサブローさん、はじめまして、50台の夫婦です。11月に妻が恋の病のCDを買ってきまして、いっぺんに夫婦でファンになりました。他の曲も聴きたくてAMAZON、やHMV等探しましたが、みつからず、やっとARIMONにたどり着き「マルセル通り38番地西入る」を注文しました。ファーストCDの「Wasaburo Fukuda」は在庫切れで注文中です。というわけで9月の日本公演は聞きもらしまさひたが、次回公演は必ず行きます。早めにご計画のほどをよろしくお願い申し上げます。

投稿: 夫婦でファン | 2006年12月20日 (水) 12時15分

訂正します。

日本公演は聞きもらしまさひたが→
訂正後→
日本公演は聴きもらしましたが

すみませんでした。

投稿: 夫婦でファン | 2006年12月20日 (水) 12時20分

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