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2006年11月27日 (月)

パリのスリ

今朝早くから電話が鳴った。
僕の家に朝早くから電話をかけてくる人はほとんどいない。
早い時間とは午前10時までという事である。
特にフランスでは午前10時までによそのうちに電話はかけないし、ましてや
僕の様な勤め人ではないアーチストの家には早朝電話はある種非常識という感覚があるので早い時間にかかる電話はほとんどが間違い電話である。
僕の家の電話番号はあるところの診療センターの電話番号に似ている為に
頻繁にその診療センターと間違ってかかってくる。
フランスの病院やお医者さんはすべて予約制なので予約の確保の為に朝一で電話をかける人が多い。
<アロー、ルーヴル診療センターですか?>あるいは
診療センターにかかっていると信じて疑わず<アロー、内科の先生に予約したいんですけど。。>あるいは<今日の予約を取り消したいんですけど>など、など。<違います。診療センターではないです>と言うと<あっ!ごめんなさい!>という人もいるけれど
<へえ!ちがう!なんで!>という人や<ちがうなら、診療センターの電話番号はなんやの!?> そんなこと僕はしらん!
はては僕の言う事など聞く耳もたずで<カンドウ先生に今日絶対予約をとりたいの!4時!絶対4時に入れてよ!えっ!間違い!冗談言わないでよ!わたし病気なのよ!あんたいったいなんなの!><なんなの!とはなんなの!自分がかけて来たんやろ!>とこんな会話で朝から疲れてしまうのでこの頃はほとんど朝早くの電話には出ないことにしている。
今日も1回目のベルには知らん顔をして出なかったら少しおいて又かかって来た。それでもほっておいたらしばらくしてまた鳴った。
さすがにうるさくなって受話器をとった。(この頃は受話器は取らずに受話器マークのボタンを押すんですけど)
電話口で興奮した声が響いた。
数日前からフランスに来ている日本の友人の声だった。
<あっ!ワサブロー!なんでもっと早う出てくれへんね!大変な事が起こったんや!いまメトロの中でスリに会うて全部とられたんや!>
<えっ!全部て何を!>
<全部!全部!パスポートも、お金も、ビザカードもぜんぶ〜〜!>
またかと一瞬思ってしまった。
今までパリで何人の日本人の盗難に付き合っただろう。
友人が立ち往生しているというメトロの駅にとりあえずパジャマだけを着替えて走って行った。
普段日本で会う時はいつもぱりっとしたフランス製のスーツを着て大手の会社の部長か何かの(日本の会社の管理職の名前に疎い僕には部長と課長の差も定かでない)偉い地位にいる為肩で風を切って歩いていて僕の様な貧乏アーチストには憐れみさえ感じられる口調で話しかけるいつもの偉そうな風情はまったく何処かに消えてしまい文字通り身ぐるみはがれた気分でまるで町の真ん中でバスタオル一枚腰にかかっている状態で突っ立っている様に見えた。
事情を聞いてみると電車に乗ろうとすると後ろから乗って来た人に押され前にいた女性に身体が触れた為にその女性から文句を言われて謝ったが直ぐ許してはくれず2、3度申し訳ないを繰り返して空いているイスに座ろうと思った時に肩にかけていたカバンが何となく軽く感じて、見るとジッパーが開いていて中身はすっぽり無くなっていたという事だった。ほんの数秒の出来事だったらしい。もちろん後ろから乗って来た男とその女性はグルに決まっている。
とにかくまずカードを止める事から始めた。
何でそんな沢山のカードを持ってないといかんのかと思う程の数で6社、10枚のクレジットカードを持っていたので6社に電話をかけた。それから近くの警察署に行き盗難届を作ってもらった。係の警察官がいなくて待つ事1時間半、調書を取られて事情を説明して無くなったものを書いてもらった。現金50万、警官がなんでそんなに現金を持っていたのかと不審がり、取られた事は2の次で何かの不正金ではないかと問いつめられていつもこのくらいは財布に入れている失礼な事を聞くな!と不機嫌になる友人とそんな現金を誰も普通は所持しないと言い張る警官、フランスではカードあるいは小切手支払いが流通しているため多額の現金を所持する人は少ない、僕でも100ユーローなんか財布に入れている事はないと言うと貧乏なお前を基準にして喋るなと友人に食ってかかられ、二人の中に入って結局日本人はいつも50万から100万くらいのお金を常に財布にみんな入れているのでこちらのスリの標的になると口からでまかせをいって無理矢理係の警官を納得させてようやく1時間かかって盗難届は作成された。その間喋っりっぱなしでお茶一杯出るわけでもなく口も頭もからからでその後大使館に行きすべてが終わったのが夕方5時であった。フランスでは東欧のいくつかの国から来ている遊牧民系統のジプシーにスリや物乞いが多いが。僕はスリも物乞いも当然同じ民族がやっているのだと思っていたら民族の中には物乞いはするが絶対スリはしないとする人達と盗みはしても物乞いなどをするまでには我々は落ちていないとする民族があると聞いた事がある。ともあれ僕の友人はこの日電車のなかで所持品を盗まれるまでに落ちた(?)事を嘆きまるで手足も脳みそも一緒に盗まれた様に言葉も通じず僕に頼らなければならなかった事がきっとショックだろうと思っていたら、暖かいココアで気分が落ちついたとみえて<ありがとう、さっきの警察でのことを思い出すとこれからお前のフランス語の歌が心にしみる様に聞こえるやろうな。。。>となんやら訳の分からん事を言っていた。

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