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2006年11月13日 (月)

パリのアパートの工事録

いま僕が住んでいるパリのアパートの建物全体の外壁のラヴァルマン(ravalement)がなされている。ラヴァルマンというのは外壁の改装工事である。
Kouji パリにあるすべてのアパートの外壁の改装工事は美しい景観を保つ為に10年に一度市の条令で義務づけられている。
この法律を無視したり決められた時期に行わなかったりすると直ちに督促状が送られてきて否応無しに1年以内に速やかに履行しなければ大変な罰金が科せられる。
この工事は少なくとも3ヶ月の期間を必要としその上非常に高くつくためアパートの持ち主には辛い義務で出来れば誰しも逃れるまでに行かなくとも可能な限り先に延ばしたいと望む大工事である。
パリのほとんどの住宅がアパート、いわゆる集合住宅なので建物の共有部分の工事はそれぞれのアパートの持ち主の支払い負担になるところは日本と同じであるがフランスのアパートの管理費には通常日本の様な工事の際の積立金は無い。80パーセントのパリのアパートは100年以上経っているのであまりにも修復工事が頻繁に必要なため少しの積み立て費用では全く追いつかない上に管理会社へ多額のお金を預けるほどの信頼を誰もおいてはいない。だから大きな工事の話が出るたびに家主は皆青くなるのである。
何時か明細をゆっくり見た事があるが外壁にそって組まれた足場だけで3000万円相当の金額が出ていて驚いたことを覚えている。
パリのアパートは年代によって建築様式もそれに使用されている材料も違うのでしたがって外壁も様々である。
20年住んでいたアパートの建物は1895年のオスマン建築であった。
オスマン建築とはナポレオン3世の命を受けて1853年〜70年にその当時のセーヌ県知事だったウジェーヌ・オスマンが行ったパリ大改造の時期に建てられた建築様式のことをさす。
高さの均一な7階建てくらいの建物で屋根はトタンのマンサード屋根、各部屋の白い天井には花柄の彫刻が施されマントルピースのある壁には金色の額にはいった大きな鏡がはめこまれている。通りに面した窓やベランダには様々な美しいデザインの鋳鉄の黒い手すりがつけられて外壁は石灰岩で出来ている為すべて生成りのようなベージュ色をしていて普通ペンキは一切使わずその石の材質がそのまま生かされている。
現在ではシックで不動産の評価額が一番高い建造物である。
ちなみに家を購入する場合、家の建物そのものの価値はほとんどの場合ほとんどなくその家が建っている土地の値段で不動産の価値が決まる日本の場合とは違いフランスでは田舎の朽ち果てた農家の様な場合を除いて都会のアパートの値段はその建物の年代、スタイル、それにその状態によって決定される。もちろんパリの中でも地区によってその値段も多いに違ってくるのでやはり土地の評価額も多少家の値段に影響しているという事になるのかもしれないが。

このオスマン建築の壁の改装工事にはほとんどHydro-gommage(水式消去とでも訳しておこう)という方法が使われている。これは細かい粒子の研磨液を含んだ洗浄液を噴射機を使い高圧で壁面に吹きかけて削り洗うという方法で日本でも道路工事の後道に残ったセメントをこのような方法で洗い流しているのを見た事がある。

現在住んでいるアパートはそれよりももっと古くて1790年代の建物なので
木と石を使ってあり壁の表面は漆喰仕立ての様な感じになっている。
このような建物の壁面にはペンキが塗ってあるため改装工事ともなればまず古いペンキを剥がし傷みやひびを修正してから1回目のペンキを塗り乾いてから2回目のペンキを塗って行くのが普通である。今まさにこの工事の真最中で道路に面した窓側には目の前に鉄柱の足場が組まれ大きなネットが張り巡らされて窓の前を工事の人が上から下へ、右から左へと歩きながら毎日作業が続いている。もう2ヶ月以上経っているがまだまだ先は遠い様な気配である。
フランスでは工事でも日曜、祭日はお休みなので遅々として進まない。
この国には突貫工事などは存在しない。
これが終わると中庭に面した壁の改装工事が待っている。その間に樋の部分修復工事が予定されていて其の後には建物内の木の螺旋階段のペンキ塗り替えがありそれが終わると下水管の取り替え工事が予定されていてその後には屋根のトタンの張り替えが続くと組合から報告書が届いていた。つい数ヶ月前、去年向いの棟の大きな屋根の修復工事がありそのあと故障して結局動かなくなったエレベーターの取り替かえがやっと終わりつい2、3ヶ月前から動き出した。その工事が終わらないうちに中庭の花壇の中を通る水道管の水漏れ工事を行い、屋根に出ているいくつかの煙突の修理工事が2ヶ月程続きやっと工事の音が聞こえなくなったと思った頃に地下室の電気配線全面取り替え工事が始まっていた。
毎回管理組合からの請求書が届くだびに心臓がどきっとする。

パリにアパートを持つという事はかくも物入りであるが大方の建物が100年、200年経っていると思えば頷いてしまう。京都の御所や奈良の大仏殿にみんなが住んでいる様なものである。

先日京都にいる時マンションのリホーム会社の人が家に尋ねて来た。
<福田さん、お宅のマンションは築27年で老朽化が進んでいます、特に下水管や風呂場など、もう改装の時期が来ています>と言われて、思わず<27年!新築ですねえ!リホームやて、まだ50年くらい先と違いまっしゃろか!>と叫んでしまった。

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コメント

初めまして。
思わず、うんうん、と頷きながら読んでしまいました。今年の7月まで5年ほどパリに住んでいたのですが、一番悩まされたのは「工事」です。水漏れ程度なら自分で直せるように鍛えられたけれど、アパートの外装はさすがに何もできず、一体、いつ終わるんだろうと眺めていました。
5年住んでいて5回引っ越しをしました。最後には高い家賃を払っているのがアホらしくて30年ローンを組んでアパートを買いましたが、帰国が決まって泣く泣く、不動産屋さんに任せてきた次第です。が、怖いのが管理費。日本でほそぼそと円を稼いでいる身としては、ユーロで請求されるのは痛いですねー。
ちなみに愛情かけて改装したアパートの写真、よかったら見てください。アドレスを載せさせて頂きます。
http://web.mac.com/alantheking/BlogRoyal/Rent_a_place_in_Paris.html

投稿: sisimaru | 2007年12月24日 (月) 18時27分

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